登山の技術をボランティアに生かす


昨年は災害の多い年であった。福山市を含む西日本豪雨で多数の死者を出す大きな被害が発生した。今年こそ平穏な一年であってほしいと願うのみである。

我々は、登山に必要な技術を、先輩より幾度となく教えられてきた。登山でのアクシデントはいつでも起こりうることであり、常に最大の注意を払って行動せねばならない。登山にはいろいろな装備があり、それを使いこなす技術が必要である。雨具、ザイル、行動食、ヘッドライト、ミニガスコンロ、コンパス、地図、GPS等々。それらを備え、使いこなしてこそ安全に目的地に到着することができる。この装備と使いこなす技術がボランティア活動に活かせるのではないかと思う。

2011年3月11日に発生した東北大震災の一年後に見た光景を、私は忘れることができない。私たちがボランティアに向かった福島・宮城県境の山元町は、家や車、そして墓石までもが津波に持っていかれていた。子供たちの声もしない中で、目に見えない放射能を気にしながら、流されたイチゴハウスの再建作業を手伝った。また、防風林の伐採と撤去の作業では、雪の舞う中で指の冷たさも忘れ、必死にチェンソーで切断された木を運んだ。全国から集まったボランティア仲間と共に作業したが、一人では何もできない。皆と助け合い協力することの大切さを強く感じた。そして、12時間かけて帰った福山の街中での子供たちの声で、日常の普通の生活のありがたさを強く感じた。

昨年夏の大雨で我が家でも床上浸水したが、福島の経験から、めげずに腰まで浸かりながら歩いて近所に飲料水を届けることができた。異常気象が続く近年、災害がいつ、どこで起きてもおかしくない。会員の多くが身につけている経験と技術、そして装備を活用し、社会に少しでも貢献できる山岳会でありたいと思う。