「なぜ山に登るのか」そう問われて一番有名な答えは「そこに山があるから」という言葉ではないでしょうか。
これはエベレスト初登頂を目指していたイギリスの登山家ジョージ・マロリーの言葉です。彼は(Because it is there)と、明確に「エべレストという未踏峰に登りたい」と答えたのですが、日本では哲学的な「そこに山があるから」という美しい言葉に和訳され有名になりました。彼は1924年初登頂を目指しましたが行方不明となり、75年後の99年に遺体で発見されました。初登頂に成功したかは謎のままです。
私も若いころ山に熱中し、各地の山を登りまくりました。
四国の名峰・三嶺に登りました。急峻な最後の急坂をあえぎながらようやく到達した頂上の標識に、次のような言葉が記されていました。
「感激なき人生の虚しさ」
そうだ! この言葉を求めて登山していたのだ。なぜ、苦しく困難なことばかりなのに山に登るのか。登る理由はこの山頂に立った感激。この感激を求めて登山しているのだ。
数々の困難を乗り越えて山頂に立つ喜び、達成感を味わうためであると、はっきりとわかりました。
以来50年。私はいまだにこの感激を求め、登山をしているのです。
〈参考資料〉
1923年3月18日ニューヨークタイムズ紙のインタビュー
なぜエべレストに登るのかWhy did you want to climb Mount Everestの問い
に答えた。
「そこに…あるから」はさまざまのパロディを生み、あらゆる言動の理由に対する答
えとして普遍的に引用されている(登山家・藤木九三氏の訳とされる)。