鯖街道


登山のジャンルの中に「歴史街道縦走」も有る。数多い歴史街道の一つの「鯖街道」は、若狭の海産物を京都へ運んだルートで、福井県南部から京都へ何本かルートがある。「京は遠ても十八里」と親しまれている言葉通り、約70kmの距離だが、針畑越えルートがお勧めだ。小浜をスタートして間もなく「神宮寺」という神仏習合の寺院がある。3月12日、奈良東大寺二月堂で挙行される「お水取り」の水は此処で汲まれる。10日前の夜、大勢の白装束の松明行列とともに遠敷川沿いに約2キロ上流の「鵜の瀬」まで運ばれ、儀式の後「お香水」は注がれる。遠敷川は当然下流に流れ日本海に注いでいるが、「お香水」は上流へ向かい10日かけて遥か彼方の奈良を目指すらしい。この儀式は千年近く営まれているとのこと、私は素直に納得した。

神宮寺から山道を歩くこと数時間、滋賀県境・百里ヶ岳の分岐の根来坂峠に着く。約450年前、織田信長が朝倉攻めで浅井長政の裏切りに遭い、敦賀から退却する時に京都に抜ける道に使った峠だ。織田信長の妹「お市の方」が両端を紐で結んだ小豆袋を信長に送り、長政の裏切りを知らせたという逸話があるが、真偽の程は定かでない。

このルートを3度歩いたが、根来坂峠の独特の雰囲気は歴史街道の面白さを満喫させてくれる。京都府左京区は山が深く歩きごたえがあるが、最後に花背峠を下れば京都鞍馬に至る。鯖街道最終地点の「出町柳」までは電車もバスも通っている。