妖怪ヒダルガミは、山の急な斜面や峠道に住んでおり、通りかかった旅つ人や登山者に憑くといわれています。ヒダルガミに憑かれると、突然にして激しい空腹感と疲労を覚え、その場から一歩も進めなくなり、ひどい場合にはそのまま死んでしまうと言われています。ヒダルガミに憑かれたときには、なにかしらの食べ物を口にすれば助かるとされ、食糧を多めに持っていくことで防ぐことができるそうです。実は私も、比婆山でこの妖怪に憑かれそうになったことがあり、副会長に食べ物を口に押し込まれた思い出があります(笑)。高知県や愛媛県にもヒダルガミ伝承が多く伝わるとか。
種明かしをすると、この妖怪の正体は、スポーツをする人なら誰にでも起こりうる「ハンガーノック」という極度の低血糖症状だと言われています。
登山でも急峻な斜面を登るとき、筋肉は大量のエネルギーを消費します。
昼前で空腹の状態のときにそういう難所に差し掛かると、体内の糖分が大量に消費され低血糖状態に陥ってしまい、最悪の場合、吐き気や意識障害で行動不能になってしまう危険性があります。ではどうすればいいのかというと、こまめに間食を摂ることです。特に難所の前や空腹時は、吸収の速いブドウ糖などの糖質補給が有効です。逆にナッツ類などの脂質は吸収が遅いので注意しましょう。うまく組み合わせて使うことをおすすめします。もし間に合わずハンガーノックとなってしまったら、消化しやすく吸収されやすいジェル類で補給するのが効果的でしょう。
ハンガーノックは誰にでも起こり得る症状です。ハンガーノックの原因や仕組みを知り、対策を取ったうえで安全な登山を心がけましょう!