伊藤新道での経験


山の登り方といっても、いろいろあると思います。仲間とわいわいおしゃべりしながら登る山、季節ごとの姿を見るために登る山、そして経験したことのない領域を目指して登る山。どれも魅力的です。

先月、富山県にある「伊藤新道」という場所を登ってきました。美しくも厳しい川の流れ、その中に湧き出す源泉、噴湯丘、硫黄の匂い…。そんな景色の中を、6人の仲間たちと手を取り合い、助け合いながら川を渡り、登っていきました。

川の流れは本当に恐ろしく、膝上まで水が来ると体を持っていかれそうになります。水の流れに逆らって岩を迂回する中で、信頼できる仲間がいることに心から感謝しました。そしてようやく、標高3,000メートル地点の山々へ。体はすでにヘロヘロです。

たどり着いた南真砂岳からの360度の眺めは、まさに絶景。雲海の中に、槍ヶ岳、穂高、黒部五郎岳、笠ヶ岳、薬師岳、鷲羽岳など、名だたる百名山がそびえ立っていました。素晴らしく、感動が止まりません。この景色を見た瞬間、今までの疲れが一気に吹き飛びました。

厳しいからこそ、それを乗り越えた時の喜びと感動は大きい。辛いトレーニングも決して無駄ではなかったのです。

登山を経験すると、当たり前だと思っていた日常が、実は当たり前ではないことに気づかされます。飲み水や食べ物があること、眠る場所があること、そして友がいてくれること。そのすべてに、あらためて感謝するようになりました。

今回の経験は、きっと私の一生の宝になると思います。