ネパール、エベレスト街道


2008年、エベレスト街道を歩いた。エベレストを見に行ったわけではない。今は夫だが、当時ネパール人の彼と結婚に必要な書類を取りに、街道沿いにある彼の故郷、ジュンべシまで行くことになったのだ。

首都カトマンズから、夜もまだ明けぬ中、地方に行く人でごったがえすバスターミナルから出発し、終点のジリまで。食料、雑貨が手に入る標高500mほどの宿場町だ。その日は宿に泊まり、翌日から歩くことに。朝、空気はひんやりと澄んでいて、気持ちがいい。

3月下旬の頃である。

6時過ぎ、ジリ(1935m)に向けて出発。緩やかな上り道では、地元の子供たちが手を合わせて「ナマステー」とあいさつしてくれる。少し下ると、シバラヤ(1800m)に着く。川を渡ると、そこからは急な登り坂だ。

最初の山、デウラリ(2705m)の優しい姿が見える。10時、やっと山頂。草原に牛が放牧され、のどかな風景が。ころんとしたダニが、牛の目の際にぶら下がっている。

お茶屋で甘いミルクティとビスケットを食べ、そこからキンザまでいっきに下り。不規則な石段をゆっくり下る。時々立ち止まり、どこまでも続く山を眺める。エベレスト山群から遠く、雪山は見えない。吹き上げる風が心地よい。

キンザ(1600m)には16時過ぎに到着。目指すはラムジュラ峠(3330m)だが、2900m辺りで親戚宅に宿泊させてもらう。雪が舞い寒い。お風呂が恋しい。

翌朝はゆっくり出発。そして峠。石を重ねた祭壇があり、五色の旗が音を立ててなびく。風が流れる。大岩が山頂へと続く幻想的な風景だ。下ると、苔むした地にヒマラヤスギの大木が現れる。ここまで来るとジュンべシは近い。もうちょっと、頑張ろう。