私が岩登りを始めて、一年になります。きっかけは四国の石鎚山に登った時のこと。山頂碑のある場所では、大勢の人が思い思いにご飯を食べたり休憩したりしていました。実はそこからさらに先に、天狗岳、墓場尾根と呼ばれる頂があります。たどり着くためには危ない思いをして、岩場を通らねばなりません。
それは岩のざらざらした表面から指で持てそうな場所を探して手をかけ、足に力を込めて全集中しなければ、命の危険を感じるという貴重な経験でした。
普段の生活で、ここまで他に何も考える余地がないほど集中することがなかった私は、自分の手足がこんなにも頼りになるものかと感動したのです。
この体験が、私のターニングポイントとなりました。2021年の春に福山山岳会に入会。岩の達人と出会ったことで、福山市の蔵王山、高梁市の備中(長屋坂)、呉市の天応、廿日市市の三倉岳など、今では素敵な仲間たちと一緒に、岩登りに励む日々を楽しんでいます。
これほどまでに岩の感触に魅力を感じるのはなぜなのでしょうか。岩は太古の昔に地球の内部から沸き上がってきたマグマが冷えて固まったもの。困難な岩に挑むことで、そんな地球のエネルギーを知らず知らずのうちに受け取っているからなのかもしれません。